【レビュー】「北斗の拳」最新作から感じたセガスマホゲーム終焉の予兆
セガゲームスが人気コミック・アニメ「北斗の拳」をスマホゲーム化した『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』の先行テストプレイが実施された。プレイレポートと共に、「究極の“北斗”ゲームの内容は?」そして「そこからわかった“セガの終焉の予兆”とは?」を解説する。
究極の“原作追体験”スマホゲーム『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』先行テストプレイレポート
「お前は既に死んでいる」「あべし!」でおなじみの人気コミック・アニメ「北斗の拳」をセガゲームスが満を持してスマホゲーム化した。それが『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』(以下『北斗リバイブ』)。原作のストーリーをケンシロウをはじめとした数々のキャラ達と体験していくといいう究極の「原作追体験」が売りとなるバトルRPGだ。
今回は2019年6月12日から6月21日の期間限定で実施される先行テストプレイという事で、正式サービス開始時には変更されている点もあるかもしれないが、テストプレイでわかった『北斗リバイブ』のゲームシステムを紹介しよう。
『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』システム (1) ストーリー
『北斗リバイブ』のストーリーは過去に「北斗の拳」の世界で起きた出来事をプレイヤー自身が「北斗神拳」の未来の伝承者候補として追体験していく、というもの。
プレイヤーは「北斗の拳」の誰かになるというわけではないので原作ファンとしては物足りない、という向きもあるかもしれない。しかしゲームのシステム上、「最大6人のキャラクターがチームを組んで戦っていく」というバトルスタイルになっているため、例えばプレイヤーが「ケンシロウ」だとしたら「ケンシロウがジードとチームを組んでジードと戦う」といった訳のわからない矛盾したシチュエーションが起きてしまうため、ストーリー設定の辻褄を合わせることを考えたらこれが最適解となるのはやむを得ないところだろう。
ゲームのストーリーはシチュエーションに応じて原作コミックのイラストを使ったストップムービーか 3D CG アニメがバトルの合間に展開するというスタイル。原作アニメと同じ声優が演じており、ケンシロウは神谷明氏が、ナレーションは千葉繁氏が演じる等、ストーリー周りの演出・出来栄えは原作ファンも納得の出来栄えと言っていいだろう。尚、ストーリーは基本的にコミック版の内容を踏襲しているようだ。
一部のキャラは様々な事情からアニメオリジナルの声優から変更されているものもいる(アニメ放映からはかなりの年月が経過しているので仕方がない…)。そういう場合は雰囲気だけでも合わせていてくれさえすればいいのだが、筆者はケンシロウの相棒・バットの声だけはどうにもいただけないと感じた。特にバットはゲームのシステムを解説してくれるチュートリアルキャラなだけに、特にセリフ量の多いキャラなのだ。子供時代のバットのビジュアルのくせに、声は青年時代のような、しかも何となくスカしたいけ好かない感じの声になってしまっており、バットがシステムの説明のために登場する度に「お前じゃねえェェェッ!!!」という想いがよぎってならなかった。
また、オープニングの「YouはShock!!」もボーカルが別のボーカルになっている。こちらもクリスタル・キングのパワフルな歌唱とは一風異なったものになっており、そのマイルドな「YouはShock!!」にも賛否両論ありそうだ。
『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』システム (2) ステージ構成
ステージは原作「北斗の拳」のストーリーに沿ってエピソード毎にチャプターとしてまとめられており、1つのチャプターは基本的に10のステージで構成されている。
今回のテストバージョンでは南斗聖拳・シンとのバトルまでが楽しめる内容になっていたが、従来の「北斗の拳」ゲームではスルーされがちだったダイヤ、クラブ、スペード等の他の敵キャラクターのエピソードも再現されており、かなりマニアックな深度(ほぼ原作を読んでいるのと同じ感覚)まで原作を再現しているようだ。プレイの継続度を上げるためにステージ数が多ければ多いほど良いという運営側の思惑もあり、細かいストーリーまで盛り込むのは当然の施策だろうが、やはりファンにとっては嬉しい対応であることは間違いないだろう。
『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』システム (3) バトルシステム
バトルは最大6人のキャラクターでチームを組み、1つのステージで3回程度のバトルを行う、というもの。プレイヤーがターゲットとなる敵、または自分のキャラをタップすると攻撃が発動し、続けてタップしていくと6人のキャラが次々と敵を攻撃していく。この時に、北斗七星型のゲージが表示され、ゲージが溜まりきったタイミングでタップすると次のキャラの攻撃力が上がり、このジャストタイミングのタップが連続して成功すれば後の順になればなるほどキャラの攻撃力が上がる倍率が上がっていくようになっている。そのため、攻撃力の高いキャラを最後にタップするようにしておくと総攻撃力がかなり上がることになるので、ただ漫然とバトル画面を見ているのではなく若干のアクション性があるのがこのバトルの特徴となっている。
6人のキャラは前衛3人・後衛3人に分かれており、前衛は攻撃を食らうことになるので防御力の高いいわゆる「壁キャラ」を、後衛には攻撃・回復等がメインのキャラを配置するといった戦略性も必要になる。
各ステージのラストには強力なボスキャラが待ち受ける。
各キャラクターには強力な必殺技も。それぞれ原作でおなじみの技とセリフを繰り出して敵に大ダメージを与える等の様々なスキルを発揮する。演出もド派手で楽しいので、積極的に使っていきたくなるぞ! いてぇよ~!!
『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』システム (4) ガチャ・キャラクター獲得方法
基本的には登場する全てのキャラクターが自分のキャラになるようになっており、新しいキャラクターを手に入れる方法はバトルの勝利報酬、ログインボーナス、またはガチャということになる。
もちろんキャラ1体がそのまま入手できる場合もあるが、基本的にはキャラは「かけら」という形でもらうことになり、一定数のかけらを集めることでそのキャラが入手できるというスタイルだ。レアリティの高いキャラは中々手に入らなかったり必要なかけらの数量が多かったりするので、欲しいキャラを手に入れるためにはガチャを回すか、バトルに何度も挑戦することになるだろう。
『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』システム (5) キャラクターの育成
手に入れたキャラを成長させるための要素も盛りだくさんだ。バトルに参加・勝利することで経験値を溜める・アイテムを使って攻撃力等のパラメータを上げる・アイテムを装備する・トレーニングルームに入れてプレイしていない時でも経験を貯める等、非常に多くの方法でキャラを強化していくことが可能となっている。
ギルドに参加すると、各種報酬がゲットできるミニゲームや他のプレイヤーとの協力等、メリットも多数。これもキャラを育成する上では重要な要素となっている。
この他にもフレンドとの協力、他ユーザーとのコミュニケーション(チャットシステムもある)等のオンライン要素もあり、「北斗の拳」のストーリーを楽しむだけではなくオンライン RPG として楽しめる部分もしっかりと用意されており、飽きずに楽しめる要素が非常に多く用意されている。
一見「北斗の拳」のストーリーを楽しむだけのようなゲームにも見えがちだが、オンラインスマホ RPG としてよくできた作りになっていると言えるだろう。
『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』は「中国産スマホ RPG」!? その理由は…?
ここまでの説明を見て、ある事に気付いたスマホゲームファンもいるだろう。『北斗リバイブ』の構成・内容は、中国系のデベロッパーが作るスマホ RPG(以下「中華 RPG」)とほぼ同じものになっているのだ。
代表的な例を挙げると、SNK の大人気格闘ゲームシリーズ「THE KING OF FIGHTERS」のスマホ RPG で中国の Ourpalm 社が開発・運営する『THE KING OF FIGHTERS ’98UM OL』(以下『KOF98UM OL』)がそれに当たる。
現在リリース3周年を迎えている『KOF98UM OL』は人気スマホゲームなので既にプレイしたことのある方も多いと思う。筆者もこのゲームはかなりハマってプレイした1人なのだが、『北斗リバイブ』の作りは実に『KOF98UM OL』とよく似ている。と言うよりも、見た目の違いを除けば、ほぼ同じ内容と言っても過言ではないレベルだ。(※現在の『KOF98UM OL』は非常に多くの追加要素が入れられているため『北斗リバイブ』にはない要素も多いのだが、配信当初の内容をベースに比較している。)
『THE KING OF FIGHTERS ’98UM OL』ダウンロード
『北斗リバイブ』のメニュー画面は小さいアイコンが所狭しと並べられているが、この辺りの構成も非常によく似ている。
(※下が『KOF98UM OL』のメニュー画面)
今人気のある中華 RPG に追随しておけば失敗が少ないとセガが判断したのか、セガが下請けに出した開発会社が中国系だからこうなったのか、どういった経緯でこのような形になったのかは不明だ。しかし 4gamer に掲載された岩本プロデューサーのインタビュー記事を読む限りでは企画開発や基本的な部分はセガが自社で作ったということで間違いはないだろう。
その時に人気のあるゲームにインスパイアされる、参考にするのは至極当たり前の事だ。それを否定しては今のゲームシーン(特にスマホゲーム)を語ることはできない。しかし、『北斗リバイブ』を作った会社はどこなのだ。あの「セガ」ではないのか。
セガがゲームの歴史に中において非常に重要なポジションにいることを否定する人はいないだろう。数々の家庭用ゲーム機とアーケードゲーム、名作ソフトを輩出してきたセガだが、スマホゲームの歴史の中においても非常に重要、かつ人気のタイトルをリリースしてきていることは周知の事実だ。『チェインクロニクル』(チェンクロ)ではそれまでシンプルで単純だったスマホゲームに家庭用と同等クラスのストーリーと世界観を導入しスマホ RPG の方向性を大きく変えた。『パズドラ』が覇権を握るスマホパズル界に、家庭用・業務用で人気のゲームを大胆にアレンジして投下し大ヒットとなったのが『ぷよぷよ!!クエスト』(ぷよクエ)だ。このように、セガと言えば同じようなジャンル・タイトルでもスマホならでは・セガならではのアレンジを絶妙に施して「やっぱりセガは一味違う」とユーザーや競合他社を唸らせたものだった。
それなのに、この『北斗リバイブ』の出来は一体どういうことなのだろうか。システムや UI、アイディアはほぼ中華 RPG をなぞったもの。頼りは「北斗の拳」のストーリーを楽しみたいというユーザーのモチベーションだけ。これが果たしてセガが作る RPG なのだろうか?
セガ復権の狼煙を上げた新製品「メガドライブミニ」の裏側
一方で、往年の「セガらしい」商品がいよいよ登場する。かつての家庭用ゲーム機の人気ハードを復刻した「メガドライブミニ」だ。
全42タイトルのメガドライブの人気タイトルがプレイできる「メガドライブミニ」だが、「これ以上の組み合わせは思いつかない」と多くのユーザーに言わしめるほどに神がかったタイトルラインナップのセンスの良さが話題となっており、これまでに登場した復刻ハードの中でも最もユーザー人気が高いという声もある。
ところがこのメガドライブミニが現在の内容になるまでの経緯は一筋縄ではいかなかったようだ。GAME THE END 編集部が独自に取材した関係者筋によると、当初メガドライブミニの企画は任天堂の「ファミコンミニ」のヒットを受けてセガの上層部から指示が下りたものだったそうだが、実はセガでは既にメガドライブミニと同じような一体型ハードが海外の企業にライセンス許諾され、海外限定で製造・販売されていた。セガ上層部はその海外向けの商品をそのまま日本向けにローカライズして出すことで安価にファミコンミニの二匹目のドジョウを狙ったというのが発端だったという。
それに「No!」を突きつけたのがかつてメガドライブのソフトに携わった開発社員達だった。海外向けのハードは安価であることも求められていたため、比較的ライセンス取得のコストやハードルの低いものばかりが集められており、日本のユーザーの嗜好など全く考慮されていないラインナップだったという。セガ上層部は「タイトルの選定など不要、そのままで出せばよい」とお手軽に利益が入ればよいという考えて、より良質なユーザーエクスペリエンスを提供することなど全く考えていなかったのだ。
「それではユーザーからはそっぽを向かれ、セガの評判を落とす羽目になってしまう。」そう危機感を感じた開発社員達は、タイトルの再選定を提案。交渉に手間暇のかかるサードパーティーのタイトルも加え、販売時期の遅延も辞さずに粘り強く各方面に交渉を重ねた結果があの神がかったタイトルラインナップになった、という裏側があるのだという。
この「面白いゲームを出すためなら全てをなげうち、上司の言うことも跳ね返す」という姿勢、これこそがかつて黄金期を作り上げたセガ・スピリッツなのではないだろうか。令和になっても息づくこの魂こそがメガドライブミニを完成させるに至ったと言っても過言ではないだろう。
セガは倒れたままなのか? 「セガのスマホゲーム」終焉の始まり
翻って、『北斗リバイブ』はどうだろうか。「北斗の拳」のネームバリュー・ストーリー・キャラクターにおんぶに抱っこで、ゲームシステムは中華 RPG の焼き直し。果たしてこのセガらしさの全く感じられないゲームにセガ・スピリッツはあるのだろうか? 今回のテストプレイから得られた『北斗リバイブ』体験からは、その存在は甚だ疑問であると言わざるを得ない。
今や日本・欧米のデベロッパーに加えて中華圏の大手デベロッパーも多数参戦し群雄割拠のスマホゲーム市場。そんな中でセガのスマホゲームが生き残るにはどうすればよいのか。看板タイトルだった『チェンクロ』『ぷよクエ』が時と共に人気が凋落した今、このレッドオーシャンと化したマーケットに競合の中華圏のデベロッパーと同じものを作っていて果たして他社との違い・差を見せつけることができると思えるのだろうか。そういった競合には出せない、セガならではのスマホゲームを打ち出していかなければ、このスマホゲーム市場に再びセガがトップ企業として存在感を見せることは不可能であることは明白だ。
ちなみに、プロフィール情報を確認したところ『北斗リバイブ』開発プロデューサーの岩本耕平氏は前職の大阪のゲーム開発会社でスマホゲームのディレクターを務めており、その後セガゲームスに転職しバンダイナムコとセガゲームスが共同開発した『聖闘士星矢 ゾディアック ブレイブ』のプロデューサーを務めている。セガのスマホゲームの黄金期を体験したプロデューサーではないようだ。
この『北斗リバイブ』が「セガのスマホゲームの終わりの始まり」となる…そんな予兆を感じさせるテストプレイであった。
もちろんこれはあくまでテストプレイの内容に基づいたものなので、正式サービスまでにセガがどのような修正・変更を加えてくるかによって全く違う結果になるかもしれない。いずれにせよ、正式サービス開始の時まで期待してお待ちいただきたい。
「北斗の拳」追体験 RPG『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』事前登録情報・リリース前にしておくべきことは?
とは言うものの、「北斗の拳」のストーリーを楽しむという点においては非常に充実したアプリでもある『北斗リバイブ』、リリースを心待ちにしているユーザーも多いだろうという事はユーザーのフィードバックレポートからも伺える。
『北斗リバイブ』は現在公式サイトにて事前登録受付を実施中だ。メール、Twitter、LINE 等、様々な方法で事前登録ができて、登録者数に応じてプレイスタート時の特典が増えるので、気になっている人は公式サイトで必ず登録しておこう。
北斗の拳 LEGENDS ReVIVE 公式サイト|sega.com
北斗の拳 LEGENDS ReVIVE【公式】(@hokuto_revive) / Twitter
さて、『北斗リバイブ』の配信開始時期は「2019年予定」となっており詳細な時期は不明。それまでの間をどのようにして待っていればよいだろうか。
筆者としては、『KOF98UM OL』をプレイしてゲームの流れを予習しておくことをおすすめしておこう。なに、ゲームのシステムはほぼ同じなので『KOF98UM OL』でプレイの流れに慣れておけば、ゲームの流れに迷うことなく「北斗の拳」のストーリーをじっくり堪能できるはずだ。
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どう聞いても、ケンシロウの声は神谷明さんじゃないです。パチンコの河本氏です。